“墓じまいラプソディ”を読んでみました。お墓や結婚に関する価値観の多様性を実感!

垣谷美雨さんの小説 “墓じまいラプソディ”を読んでみました。

30代、60代、80代などの登場人物それぞれが自分目線で語っていくストーリーです。

墓じまいだけではなく、結婚について、結婚後の苗字について、それぞれの人々がみんな違う価値観を持っていることを実感する小説でした。

おもな登場人物は松尾家と中林家の人々。
それぞれの家の30代の息子と娘の結婚が決まり、結婚準備を進める中で話が進んでいきます。

巻頭に家系図がついているので、なんどもそのページへ戻り、人物相関を理解しながら読みます。自分語りですから、遠慮のない本音トークなのでインパクトがあり、一気に読み進めることができました。

松尾家と中林家は東京在住ですが、60代の両親たちは地方にお墓があります。そのお墓をどう管理し、どう継承していくか?というのが、それぞれの目線で語られます。

例えば、お寺に関しては象徴的とも言える、二人の住職が登場します。

まず、ひとつのお寺は、お墓にこだわらず檀家さんの意見に沿うタイプの若い住職、一方のお寺は、墓じまいを希望すると高額な料金を提示してくる住職が登場しました。

実は、その高額な料金というのが驚きでした。
御霊抜き30万円、離檀料150万円、墓石解体・撤去作業料55万円、墓石のトラック移送料270万円(鹿児島から東京間1350キロの場合)、更地費用12万円、遺骨取り出し料、遺骨1柱3万円、改葬先での御霊入れ30万円。
なんと、総額で300万から500万円が提示されたのです。

これは小説ですが、現実の話を参考にしているのでしょうし、とても驚く金額です。
そんなにしてまで、先祖代々のお墓を動かす必要はない!と登場人物は気付きはじめます。

ところで、前述の若い住職の方は、「墓じまいや合祀墓を選ばなくても、日本全国の多くの墓が事実上の永代供養に移行しつつあると思う。」という意見を言っていました。
どの家も、そのうち墓守がいなくなる・・・というのは、現実的な話かもしれません。

そのほかにも、夫の姓を名乗るのが嫌で結婚を辞めた女性が出てきたり、フェミニストをアピールしていたけれど妻の姓になるのを嫌がる男性がいたり、夫の代々の墓に入るのを嫌がる妻がいたり・・・・多様な人々が描かれていて、興味深かったです。

墓じまいラプソディ